against GFB

東京都に抗議する!
2006.05.03 start!
【更新情報】
2008.01.07 高橋氏のプロフィールを改めました。
07年07月、仙台市男女共同参画推進審議会委員への委嘱、
同年10月、埼玉県教育委員会委員長への就任、おそらくは、それに伴う埼玉師範塾理事長退任を、
加えました。
2006.08.09 【新着記事】欄を作り、高橋氏からの「公開質問状」送付とそれへの対応について書きました。
2006.06.25 ご無沙汰してしまいましたが、その後の動きについてお知らせいたします。
5/22日に、賛同署名を携えて都庁を訪問し、記者会見をいたしました。
『ふぇみん』が報じてくださいましたので、編集部の許諾をいただいて、紹介させていただきます。



東 京 都 の 男 女 平 等 参 画 政 策 の 後 退 を 憂 慮 す る !




 第3期東京都男女平等参画審議会委員に、高橋史朗氏が入ったことについて関心をもっていただいたみなさまへ。

 このページは、この問題に関する情報を提供し、これを憂慮する行動に加わっていただくために開設したものです。5月1日の発表の後、同日、私ども「東京都の男女平等参画政策の後退を憂慮する市民の会」は、「憂慮声明」を東京都知事、東京都生活文化局長宛に提出いたしました。こちらでのお知らせが遅くなりまして申し訳ございませんでしたが、5月3日より、5月18日(木)24時を締切時間として賛同署名を募り、同月22日(月)に都庁を訪問して、知事室ならびに生活文化局へ届けてまいりました。ご賛同いただけた方々は、合計802名。さらに13の団体賛同をいただきました。深く感謝いたします。

 この記者会見のもようは、『ふぇみん』6月5日号に報告記事が掲載されました。編集部より掲載の許諾をいただきましたので、下に掲示いたします。

 その後2回(5/15、6/22)、審議会が開催されていますが(第1回議事録pdfファイル)、私どもは、いずれも傍聴しています。今後とも、必要な活動をしていく所存です。みなさま、どうぞ、私たちとともに、東京都の男女平等参画政策をモニタしてください。



【新着記事】

06.08.09 6月15日付けで、高橋史朗氏より、東京都を介して、以下のような「公開質問状」が当会宛送付されました(全4ページ。画像をクリックしていただきますと拡大表示されます)。私ども「憂慮する市民の会」では、7月5日に、「「公開質問状―『新たな全体主義』を憂慮する―」に応える」を、指定の電話番号に、ファクシミリ送信しております。





「東京都の男女平等施策の後退か 高橋史朗委員就任に憂慮」@『ふぇみん』2006年6月5日(第2793号)

 東京都男女平等参画審議会委員に、高橋史朗明星大学教員(元新しい歴史教科書をつくる会副会長)が就任した。
 5月22日「東京都の男女平等参画政策の後退を憂慮する市民の会」(呼びかけ人は若桑みどりさんら28人)が賛同人802人の名簿とともに、東京都知事室と生活文化局に声明を手渡した。都生活文化局男女平等参画室は「いろいろな人の意見があってよい」と応対した。
 続いて行った記者会見では若桑みどりさん(元千葉大学教員)が「高橋史朗という人は、明らかに男女平等、男女共同参画社会基本法の理念にも反する発言を繰り返しており、いろいろな考えの人が入っていいという論理は詭弁である。男女平等施策を推進する目的で組織された審議会に不適切だ」と強調した。
 15日に開かれた第1回の審議会で、高橋史朗委員が尾形光琳の「紅白梅図」を例にあげ男女のバランスが大事、ジェンダー・フリーはよくないと強調していることは非常に問題である、と傍聴した丹羽雅代さん(アジア女性資料センター)が指摘した。
 米田佐代子さん(女性史研究者)は「高橋史朗委員は2004年には他のバックラッシュ派とともに荒川区の男女共同参画社会懇談会副会長になり、男女共同参画基本法の逸脱防止や家庭や胎児の尊重といった文言の基本条例案をつくり、全国的な反対のなかで区長が撤回した事件 があった。東京都はこれを知っているのか知らないのか、いずれにしても不適切」と。
 東京都はこれまで男女平等政策で先進的な施策を行ってきた。1970年代から婦人問題解決のための行動計画を策定、92年には東京女性財団を設立、95年東京ウィメンズプラザを開館。ジェンダー・フリーに関する冊子などもつくってきた。しかし石原慎太郎が都知事になってから、東京女性財団解散などの後退政策が目立つようになっている。02年の「東京都行動計画チャンス&サポートプラン2002」には、男女混合名簿の全校実施が入っており、こうした点の後退も危惧される。


2006年5月1日

東京都知事 石原慎太郎 殿
東京都生活文化局長 殿



憂 慮 声 明

 本日、東京都は、第3期「東京都男女平等参画審議会」の開催と、委員全25名を発表しました。この審議会は、東京都が2000年4月1日から施行している「東京都男女平等参画基本条例」に基づき、東京都の男女平等参画行動計画その他男女平等参画に関する重要事項を調査審議するために設置される、知事の付属機関です。東京都では現在「男女平等参画のための東京都行動計画・チャンス&サポート東京プラン2002」を指針として男女平等参画施策が進められていますが、この行動計画は今年度末で実施終了期限を迎えます。本日発表された第3次審議会は、この5年間の行動計画実施状況を振り返り、評価し、新たな次期行動計画策定に向けた答申をまとめるという、いわば東京都の男女平等参画施策の方向付けを決める重要な役割を帯びています。

 私たちは、その名簿の中に、「高橋史朗」氏の名前があることを知り、大変驚きました。高橋氏の男女平等に対する認識や、それに関わる発言、彼の名によって発表された文書などは、ことごとく東京都男女平等参画条例に反するものといわざるを得ません。そのような人物が「東京都男女平等参画審議会」委員として加わることは、今後の東京都の男女平等参画施策の行く末に、大きな問題を引き起こすのではないかと憂慮します。

 東京都では、条例施行後も、男女平等推進基金の一般財源化を財政困難という理由のもとに実行し、また審議会等委員への女性登用率35%の数値目標を掲げながら実際には低下するなど、見過ごせない平等施策の逆行がいくつも見受けられます。東京都の男女平等参画施策のこれ以上の後退は許されないのです。

 そのような中での高橋氏の委員就任と、審議会での今後の審議や男女平等参画施策の運びは、全国からの注視のもとにあります。私たち東京都の男女平等参画政策の後退を憂慮する市民の会は、今後の審議会などを注意深く見守り、全国に発信し続けていくことを公表します。

呼びかけ人(敬称略・五十音順・06.05.17現在);
赤石千衣子(ふぇみん)、浅井春夫(立教大学教授)、石坂啓(マンガ家)、伊藤みどり(女性ユニオン東京)、井上輝子(和光大学教員)、上野千鶴子(東京大学大学院教授)、江尻美穂子(津田塾大学教授)、戒能民江(お茶の水女子大学教員)、加藤秀一(明治学院大学社会学部教授)、亀永能布子(「女のホットライン」)、北原みのり(ラブピースクラブ)、坂本洋子(mネット・民法改正情報ネットワーク)、佐藤文香(一橋大学大学院助教授)、東海林路得子(矯風会ステップハウス所長)、俵義文(子どもと教科書全国ネット21)、田中かず子(国際基督教大学教授)、鶴田敦子(子どもと教科書ネット21代表委員)、中野麻美(弁護士)、中山千夏(作家)、丹羽雅代(アジア女性資料センター)、橋本ヒロ子(十文字学園女子大学教授)、細谷実(日本倫理学会・関東学院大学教員)、丸本百合子(百合レディスクリニック)、皆川満寿美(埼玉ベアテの会・大学非常勤教員)、三宅晶子(千葉大学教授)、若桑みどり(千葉大学名誉教授)、吉見俊哉(東京大学教授)、米田佐代子(女性史研究者)

東京都の男女平等参画政策の後退を憂慮する市民の会



 今回のこの行動は、上野千鶴子東京大学大学院教授への支援行動(「東京都に抗議する!」)同様、数年前より広がっているある動きに対抗するためにも行われています。わたしたちは、たくさんの方々に、この動きのことを知っていただき、わたしたちとつながっていただきたいと願っております。どうか、このページを、関心おありの方へ広くお知らせくださいますよう、お願いいたします。




高橋史朗氏関連資料

■プロフィール;
1950年兵庫県生まれ。早大大学院修了。米スタンフォード大学フーバー研究所客員研究員などを経て明星大学人文学部心理教育学科教授。NPO法人師範塾理事長、感性・脳科学教育研究会会長、埼玉県教育委員(教育委員長職務代理者→07年10月25日、埼玉県教育委員会委員長に互選)、埼玉師範塾理事長(07年11月8日で退任)、仙台市男女共同参画推進審議会委員(07年7月より)、PHP親学研究会主査 ほか。

■社会的役職(元職);
臨時教育審議会専門委員(1984〜1987年);中曽根内閣
青少年健全育成調査研究委員会(自治省)座長
「日本の教育改革」有識者懇談会(民間教育臨調)委員(運営委員長)(2003年〜?)
 2004.10.29 中山文部科学大臣宛「要望書」
荒川区男女共同参画社会懇談会副会長(会長;林道義東京女子大学教授/当時)(2003〜2004年)
「新しい歴史教科書をつくる会」副会長(1999〜2004年)
PHP教育政策研究会主査(提言書「活力ある教育の再生を目指して」) ほか

■著作(単著を中心に);
2006 『子どもが生き生きするホリスティックな学校教育相談』学事出版
2004 『感性を活かすホリスティック教育』モラロジー研究所
2004 『「命の大切さ」を実感する心の教育―この体験が生徒を変えた』(福岡県立久留米筑水高校・高橋史朗著)学事出版
2004 『親学のすすめ―胎児・乳幼児期の心の教育』(親学会編)モラロジー研究所
2003 『私たちの美しい日の丸・君が代―子供たちに伝える国旗・国歌物語』(高橋史朗編集・石井公一郎著)明成社(改訂版)
2001 『日本文化と感性教育―歴史教科書問題の本質』モラロジー研究所
2001 『検証・戦後教育―日本人も知らなかった戦後五十年の原点』広池学園出版部(95年刊行本の再刊)
2000 『新しい教科書誕生!!』(編集)、新しい歴史教科書をつくる会編集、PHP研究所
1999 『講座 感性・心の教育(全5巻)』(編集)明治図書出版
1999 『「学校崩壊」10の克服法―親と教師はこう立ち向かえ』ぶんか社
1998 『臨床教育学と感性教育』玉川大学出版部
1997 『歴史教科書との15年戦争―「侵略・進出」から「慰安婦」問題まで』(西尾幹二・藤岡信勝・小林よしのり・高橋史朗著)PHP研究所
1997 『歴史の喪失―日本人は自らの歴史教育を取り戻せるのか』総合法令出版
1997 『歴史教育はこれでよいのか』東洋経済新報社
1997 『平和教育のパラダイム転換』明治図書出版
1997 『ちょっとまって!夫婦別姓―家族が「元気の素」になる』(長谷川三千子・市田ひろみ・高橋史朗・木村治美著・日本の教育を考える母親の会・夫婦別姓に反対する女性フォーラム共編)日本教育新聞社
1996 『感性を活かすホリスティック教育―いじめ・不登校を克服し、子どもの「いのち」を救う』広池学園出版部
1996 『新学力観を活かす学校教育相談』学事出版
1994 『間違いだらけの急進的性教育―エイズ・性をどう教えるか』黎明書房
1993 『教育再生の課題(上・下)』日本教育新聞社
1991 『魂を揺り動かす教育―全国の教育現場を行脚して』日本教育新聞社
1991 『悩める子供たちをどう救うか―いじめ、登校拒否、非行から立ち直った感性教育の現場から』PHP研究所
1989 『欧米から見た日本の教育―教育の国際化とは』(高橋史朗 ハリー・レイ著)協同出版
1988 『教科書検定』中公新書
1987 『占領下の教育改革と検閲―まぼろしの歴史教科書』(高橋史朗 ハリー・レイ著)日本教育新聞社
1986 『総点検・戦後教育の実像―荒廃と歪みの構図を探る』PHP研究所
 ほか

■高橋氏による「ジェンダー(フリー)・バッシング」

●『正論』『産経新聞』などで、「性教育」「家庭科教育」「ジェンダーフリー教育」を批判する文章を多数執筆

2002年 『諸君』4月号 「ファロスを矯めて国立たず」
2003年 『正論』1月号 「それほど愛国心がお嫌いか―フェミニストに歪められる改正教育基本法」
(全文)http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2002/01254/contents/727.htm
2003年1月27日 『産経新聞』朝刊 【解答乱麻】「“拠点”はやはり国立市」
(全文)http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2002/01254/contents/726.htm
2003年 『正論』4月号 「過激な性教育の背景を暴く」
(全文)http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2002/01254/contents/728.htm
2003年 『正論』7月号 「相次ぐ過激な男女共同参画条例制定 『家族解体』『伝統破壊』へと暴走する自治体」
2003年 『正論』11月号 「対談 フェミニズムへの反論決定版!! 良識の包囲網にボロを出し始めたジェンダーフリー論者たち」(林道義氏との対談)
2004年 『正論』7月号 「走り出した教育基本法改正と歪んだ抵抗勢力」
2005年 『正論』6月号 「教師諸君! 必要なのは貴方たちの覚悟だ」(上田清司埼玉県知事との対談)
(全文)http://www.sankei.co.jp/pr/seiron/koukoku/2005/0506/ronbun1-1.html

●2003年12月、東京都荒川区に設置された「男女共同参画社会懇談会」で、林道義東京女子大学教授(当時)、八木秀次高崎経済大学助教授とともに、委員になった(林氏は会長、高橋氏は副会長)。この懇談会は、「報告書」を提出し、これに基づいて荒川区は「男女共同参画社会基本条例案」を策定したが、報告書、条例案ともに「男女共同参画社会基本法」の理念に反する論点を多く含むものであったため、問題化。条例案は、2004年7月の区議会で撤回された。

荒川区男女共同参画社会懇談会会議録

cf. 『論座』2005年3月号;「ジェンダーフリーたたきの深層」
http://www3.asahi.com/opendoors/zasshi/ronza/backnumber/f200503.html
北田暁大「近代的家庭の相対化への不安が根っこにある」
高橋純子「ルポ なぜ区長は条例案を撤回したのか―荒川区「男女共同参画社会基本条例」顛末記」
北原みのり「気がつけば『女性憎悪』全開の時代―そして私は途方に暮れる」
八木秀次「インタビュー 一部の特殊な人たちの考えが基本法になってしまった」

北田暁大「近代的家族の相対化への不安感が根っこにある」への注@試行空間
cf. 『世界』2005年4月号;「特集;ジェンダーフリーって何?」
http://www.iwanami.co.jp/sekai/2005/04/directory.html
汐見稔幸「生きやすい・働きやすい社会をつくる、ということ―市民的公共性と男女共同参画」
金子雅臣/水島広子「(対談)ジェンダーフリーはこわくない」
細谷実「男女平等化に対する近年の反動はなぜ起きるのか?」
張學錬「荒川区条例問題にみるバッシングの実像」
丹藤弘子「家庭科に何が起きているか」

●2004年12月、埼玉県教育委員に就任。委員会では、バッシング発言を行う。
*委員就任時、市民、教職員組合などから反対運動が起こった。理由は、「新しい歴史教科書をつくる会副会長」であったこと(同年11月に「つくる会」退会)、「民間教育臨調委員」であったこと(現在も委員を続けている?)。また、扶桑社版教科書の編集に携わっているのではないかと問われて否定したが、文科省は、翌年4月、国会質疑において扶桑社版公民教科書の監修者であったことを公にした(12月6日に扶桑社より削除申請があり、著作編修関係者名簿から削除)。このため、批判は続き、2005年8月の教育委員会では、社会科教科書採択時に退席した。

cf. 「教育と自治・埼玉ネットワーク」05.04.26声明「高橋史朗委員の辞任ないし罷免を要求する」
http://blog.livedoor.jp/kyoiku_jichi_saitama/archives/20147195.html

 *「教育と自治・埼玉ネットワーク」ブログ;埼玉県ほかでのその後の動きについての資料あり
  http://blog.livedoor.jp/kyoiku_jichi_saitama/

教育委員会での発言例
第1501回(2005年3月23日)
「また、職場における男女共同参画の推進という項目があります。このことについては、県議会でも逢澤義朗議員による質問があり、知事と教育長が答弁しています。男女共同参画社会が目指すものは、男女の人権の平等、同等化であると考えています。しかし、ジェンダーフリーという言葉が、一部で男らしさ、女らしさを否定し、男女の同質化を目指すものとして使われています。これは本来の男女共同参画、男女平等とは異なるものですので、混乱を避ける配慮をしてもらいたいと思います。」

第1515回(2005年8月24日);県立学校教科書採択審議
「もうひとつ具体的な意見を言いたいのですが、技術・家庭の家庭分野の教科書についての意見です。私は、常々学生に尾形光琳の紅白梅図を見せながら、紅梅と白梅の間に広い川が流れているバランスというものが大事だと話していますが、結論から言うと開隆堂の家庭科の教科書の家族に関する記述、あるいは取り上げ方は、バランスを欠いているのではないかと考えています。具体的に言うと、例えば176ページからの記述ですが、そこでは、私と家庭生活ということで家族の問題、家庭の問題が取り上げられていますが、その私と家庭生活の冒頭にいきなりさまざまな家族という見出しで家族の形は多様で時代とともに変化するということを強調しています。そして、それに続く見出しとして、家族の変化という見出しが出てきて、家族関係や役割が変化していることを強調しています。そして最後の締めくくりとして、183ページに振り返りというのがあるのですが、ここは振り返りによってどういうポイントを抑えるかによって狙いが分かるのです。そこには3点書いてあり、ちょっと読みますが、183ページです。さまざまな家族の形があり、その考え方も人によって異なるが、それぞれに尊重すべきことが分かりましたか。2番目は、家事の担い手について問題点を発見することができましたか。3番目は、家族関係の問題の解決のため、支援してもらえる人や団体、機関があることが分かりましたか。私はこのように書いてあることが問題だといっているわけではなく、バランスが取れていないということが問題だと感じています。つまり、これはかつて平成8年度に、高校の家庭科の教科書が18点のうち4点が不合格になったということがありましたが、その主な理由は、家族の基本ということよりも多様な家族ということを強調するのは主客転倒であり、学習指導要領の趣旨に従えば検定意見をつけざるを得ないということでした。中学の開隆堂の家庭科の教科書にも共通する問題点があるのではないかと考えます。特に締めくくりとしての振り返りには、学習の狙いが明確に触れられますが、家庭生活や家族について、中学生に学ばせるポイントが先ほどの3点で果たして良いのか、あまりに偏っていると、私は感じました。なお、自らが著作した高校家庭科教科書が不合格になった裏事情について、鶴田敦子聖心女子大学教授が朝日選書『家庭科が狙われている』という本で詳述していますが、この開隆堂の中学家庭科の教科書の著作者の中心的役割を担った一人は、鶴田先生です。鶴田先生は、この本で『家庭科はジェンダーフリーの意識で180度転換して位置付けられた。男女共同参画社会に向けては、ジェンダーフリー教育が重要である。ジェンダーフリー教育は学校教育の普遍的な課題である』という趣旨の主張をされていますが、このような男女共同参画とジェンダーフリー教育の混同を正すことが私は今後の埼玉県の教育改革の課題のひとつであると考えています。先日、上田知事から男女共同参画推進プラン2010の見直しについての資料を渡されましたが、それを見ていましたら、男女共同参画の視点に立った教育、学習の充実という基本課題の中の、施策の基本方向の3本柱の冒頭に、ジェンダーフリーの視点に立った教育の推進と明記してあります。これについては、根本的に見直す必要があると思っていまして、今後、家庭科、特に家庭分野の教科書についても、その点を十分に考慮する必要があるのではないかと思っています。」

●他の発言具体例
・「過激な性教育の背景を暴く」『正論』2003年4月号
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2002/01254/contents/728.htm
(最後の段落)
「性の自己決定権を子どもに教える急進的性教育やジェンダーフリー教育は、人類が祖先から受け継いできた「文化」という知恵の宝庫の解体を目指す、歴史否定・文化否定・道徳否定・家族否定の新たな革命運動に他ならない。このような過激な教育は国民の常識とは大きくかけ離れているにもかかわらず、大した抵抗もなく一人歩きし、空気のように広がりつつある。そこに、教育の歪みの深刻さがある。従来の戦術を転換し、「男女共同参画」「性的自立・自己決定権」の名の下に社会解体を目指す新たな教育革命運動を断固阻止しなければならない。」

・「『保育サービス』の充実が国を滅ぼす」@つくる会;ボイスリレー(2003年12月)
http://www.tsukurukai.com/15_web_voice/webvoice_vol05.html
 「マクドナルド化する効率的な社会に子育てを合わせるのではなく、子育ての意義と喜びを実感できる「親学」を継続的に学ぶ場を全国に構築し、親の意識改革を目指す親学ネットワークが必要である。『ジェンダーフリー』を提唱して『少子化対策』とするのは、糖尿病の治療に高カロリー食をすすめ、野生動物の生息する森をどんどん切り崩しておいて、一生懸命人工飼育しようとするようなものである。
 少子化の根因はジェンダーフリー論者が喧伝しているような『男女共同参画社会が確立していないことにある』のではなく、若い女性たちが、ジェンダーフリー教育やその延長線上にある家庭科教育などの影響を受けて、結婚・出産・子育てを自由を束縛し自己実現を阻む要因と考えるようになったことにあるのではないか。『親学』を広げることによってこのような意識を変え、少子化する社会そのものを変革し、少子化しない新たな男女『共創』社会を建設していく必要がある。地域社会のみならず、保育園(所)、幼稚園、小・中・高などのあらゆる場を『親学の場』として位置づけ直す必要があろう。」

・上田清司埼玉県知事との対談「教師諸君! 必要なのは貴方たちの覚悟だ」@正論(2005年6月号)
http://www.sankei.co.jp/pr/seiron/koukoku/2005/0506/ronbun1-1.html
「『男のくせに』『女のくせに』と言い過ぎたら問題ですが、男らしさ女らしさそのものを否定したらこれも問題ですね。両極端は排するというバランスが大切です。男らしさ女らしさそのものを否定するのが、ジェンダーフリーの行き過ぎた点だと思っています。」