against GFB

2006.01.23 start!
【更新情報】;2006.07.02
・久しぶりの更新です。月刊誌『サイゾー』最新号(7月号)に、「上野教授拒否事件の余波!? 都庁御用メディアの体たらく」という記事が
掲載されましたので、【マスメディア報道】のパートに掲載しました。また、問題の「不掲載」原稿も読んでいただけるようにしました。
・大変遅くなりましたが、「猪口大臣に要望しました!」のページをリンクしました。




東 京 都 に 抗 議 す る !


そして、

(東 京 都 の 男 女 平 等 参 画 政 策 の 後 退 を 憂 慮 す る !)

さらに、

(猪 口 大 臣 に 要 望 し ま し た !)



 上野千鶴子東京大学大学院教授の、国分寺市「人権に関する講座」講師任用をめぐる東京都の対応について関心をもっていただいたみなさまへ。

 このページは、この問題に関する情報を提供し、抗議行動に加わっていただくために開設したものです。これまで、抗議文「上野千鶴子東大教授の国分寺市『人権に関する講座』講師の拒否について、これを『言論・思想・学問の自由』への重大な侵害として抗議する」に賛同署名を募り、東京都庁を訪問して手渡す、という活動をいたしました(その後都庁記者クラブにて記者会見に臨みました)。ご賛同いただきましたみなさまに深く感謝申し上げます。

 ご賛同(署名)の受付は、1月26日(木)正午で終了いたしました。集約させていただきましたところ、以下のようになりましたので、取り急ぎ、ご報告させていただきます。

1808筆

うち、匿名希望 339筆

団体賛同 6筆


みなさまから寄せられたご意見


 今回のこの行動は、上野教授を支援するためだけに行われたものではなく、数年前より広がっているある動きに対抗するために開始されました。わたしたちは、たくさんの方々に、この動きのことを知っていただき、わたしたちとつながっていただきたいと願っております。どうか、このページを、関心おありの方へ広くお知らせくださいますよう、お願いいたします。

 なお、上記の通り、「今回のこの行動」に関しましてのご賛同受付は、終了しております。「第一次集約」「第一次締め切り」といったかたちで情報を受け取られていた方々にはまことに申し訳ありませんが、どうかお許しください。当方の処理能力に限界があるためです(みなさまから寄せていただきましたご意見のアップロードなど、しなくてはならないことがまだまだございます)。締切時間終了後に送信され、こちらですでに受信している方々のご意志につきましては、(もちろん)何らかのしかたで生かしたいと思っております(こちらで報告させていただきます)。



【お知らせ】

06.04.18 4月13日に、国分寺市民の方々が、抗議文を持って、再抗議のため、東京都庁を訪問されたそうです。上野さんより、国分寺市の方々より再抗議文を提供いただいたと連絡いただきましたので、下に展示します。

06.03.26 昨日、「ジェンダー概念」シンポジウム実行委員会主催(「イメージ&ジェンダー研究会・日本女性学会共催)の「『ジェンダー』概念を話し合うシンポジウム」が開催されましたが、そこに、上野さんからのメッセージが届き、読み上げられました。このメッセージを、以下に掲示します。東京都のみなさん、どうぞ奮ってご相談ください!

(上野千鶴子さんからのメッセージ)


東京都のみなさんへ

 上野の講演を聞いてみませんか? 都の主催または共催の事業に上野を講師に呼んでください。テーマは「男女平等社会をつくる」。企画が実っても、実らなくても、経過をすべて情報公開しましょう。ご相談したい方は上野まで。eメールで。

u e n o @ l . u - t o k y o . a c . j p
(送信の際には、半角スペースをすべて取り去ってください。)



06.03.17 お知らせが遅くなってしまいましたが、3/2付けで、国分寺市から「東京都の人権意識を考える市民集会実行委員会」の「公開質問状」に対する回答が届きました。直下をご覧ください。画像ファイルをアップロードしました。

06.02.16 2/13付けで、国分寺市から上野さんの「公開質問状」に対する回答が届きました。下をご覧ください。お知らせが遅くなってしまい、申し訳ありません。m(_ _)m

06.02.14 2/13付けで、東京都から国分寺市民の方々へ、回答が届いた旨上野さんへ連絡がありました(上野さんへの回答と同じものです。文書番号は、1番違いです)。また、この回答を受けて、国分寺市民の方々は、2/5に開催された「東京都の人権意識を考える市民集会」の実行委員会名で、国分寺市長と国分寺市教育長宛てに、再度、公開質問状を回答期限付き(2/20)で送付されました。公開しますので直下をご覧ください(レイアウト等は原文とは異なります)。許諾をいただいた「東京都の人権意識を考える市民集会」実行委員会の方々に感謝します。なお、2/14現在、国分寺市から上野さん宛の回答は、いっさい届いていないそうです。

06.02.08 東京都から、上野さんの「公開質問状」に対する回答が届きました。

06.02.07 上野さんが、東京都知事ほか宛てに、「督促状」を送付しました(回答期限は2月20日)。

06.02.06 本日も東京都および国分寺市からの回答は未着と、上野さんから連絡がありました。

06.02.05 上野千鶴子さんが、東京都知事らに出した公開質問状の回答期限を過ぎましたが、ご本人によると、期限日(31日)も、その翌日(1日)も、回答は届いていない、とのことでした。どうやらその後も、届いていない模様。



【国分寺市民から東京都への再抗議文】   ←06.04.18 new

東京都教育長様


抗 議 文



 2005年12月15日、私たち「東京都の人権意識を考える市民集会 実行委員会」は、東京都に対し、平成17年度文部科学省委託事業「人権教育推進のための調査研究事業」の実施にあたり、東京都と国分寺市が再委託契約を結ばなかった件につき、抗議文並びに公開質問状を提出しました。
 その面談の際、東京都が認識している今回の経緯が、準備会を通して国分寺市から聞いていた内容と著しく異なる受けとりであることを知らされ驚きました。
 その後、私たちは、国分寺市に対し、公開質問状を提出し、回答を得ました。国分寺市からの回答文、面談、又、本委託事業実施体である「公民館」の会議録、国分寺市議会での答弁等により、以下のような事が明らかになりました。更に、事実を明らかにするため、東京都には情報の開示請求をしました。

1.2005年12月15日、東京都は、「東京都の人権意識を考える市民集会 実行委員会」のメンバーと面談の際、「8月1日に国分寺市に赴き、国分寺市の担当者らと話し合いの後、何の連絡もなく、突然、取り下げの事務連絡がきた。」と言っている。国分寺市は、8月3日、公民館として準備会の意向を尊重することを確認し、都教委に公民館の考えを伝え、突然の取り下げの連絡ではなく再交渉している。

2.東京都は、講師が上野千鶴子さんであることを知った後、「ジェンダーフリーに触れる懸念はないかと問い合わせただけで、国分寺市から取り下げた。」と言っている。2005年8月1日、東京都の担当者2名が国分寺市を訪れ、国分寺市の担当者5名と話し合った際、東京都からは、「講師である上野千鶴子さんは、ジェンダーフリー論者であり、東京都の委託事業として実施するのは難しい。平成16年度6月の都議会で議論があり、8月に教育委員会としてはジェンダーフリーの用語は使用しない事となる。ジェンダーフリーについては、学習の主題には馴染まない。今回は諮っていないが、現在講師選定委員会があり、東京都教育委員会では、講師選定に関しては神経を使っている。」との話しがあった。国分寺市は、今回の企画が、「当事者主権」の人権講座であり、ジェンダーフリーがテーマはないので、実施させて欲しいと伝えた。東京都の見解は、触れる可能性があるということも含めて方針が変わらなかったので、国分寺市はそれを確かめて、採択は不可能だろうと言うことで、実施しないこととした。又、委託事業として受けられないとのことならば、その旨を文書で欲しいと伝える。東京都からは、委託を申請した団体が提出すべきと伝えられ、8月17日付の文書を提出した。

3.国分寺市は、本実施計画は、東京都の委託要綱に基づいて作成したものであり、逸脱はなかったとの見解を示している。

 以上のことから、講座の中止は、東京都の介入によるものであることが、明らかになりました。

○行政は市民に対し、公正な業務を遂行する為には、行政間での文書でのやり取りが重要である。にもかかわらず、今回委託出来ない理由を文書で示さない、議事録を残さない等、経緯や、責任の所在があいまいになった。市民に対し、より透明性を高めるために、このことの重要性を認識し、行政を進めるべきだ。

○国分寺市の今回の企画は、国の委託事業である、「人権教育推進のための調査研究事業」実施要綱、並びに、東京都の実施委託要綱に基づいて作成した講座内容にもかかわらず、東京都は「ジェンダーフリー」の見解を持ち出し、事業を中止せざるを得ない状況に追い込んだ。東京都は人権学習推進と言いながら、市民の自由な学習の機会を奪い、知る権利を侵した事になる。

○平成18年2月7日付 東京都教育庁生涯学習スポーツ部社会教育課長名での「公開質問状について」の文書は、公開質問状への回答になっておらず、もしこれを回答と言うのであれば、、誠に不誠実なものであると言わざるを得ない。

○開示請求により明らかになった、「生涯スポーツ部講師等選定委員会」は、企画内容の検討及び、講師選定を公正中立の立場で行うためとある。しかし、市民が、情報公開でも知ることが出来ない内部組織で、講師の選定等の判断を下すことは、思想統制にも繋がりかねない危険性をはらんでいる。

 以上の事を踏まえ、今回、東京都が、国分寺市と再委託契約を結ばなかった事は、市民の保障されるべき自由な学習と知る権利を侵すものです。「人権教育推進」と言いながら、東京都がとって来た対応は、市民への人権侵害と考え、再度強く抗議します。

東京都の人権意識を考える市民集会実行委員会
2006年 4月13日





【国分寺市から実行委員会への回答】   ←06.03.17 new


































【国分寺市から上野教授への回答】   ←06.02.20 new

国教教生発第47号
平成18年2月13日

 上野 千鶴子 様

国分寺市教育委員会教育部
生涯学習推進課長  熊谷 淳


公開質問状について(回答)


 平成18年1月13日付,国教教庶収第484号文書,及び平成18年2月7日付,国教教庶収第522号文書,市長,教育委員長,教育長,生涯学習推進課長宛の2件の公開質問状について,下記のとおり回答します。


(1)国分寺市教育委員会は,東京都教育委員会と実施計画書の内容について協議しましたが,東京都教育委員会の意向からモデル事業の再委託を受けることは困難と判断し,本事業を実施しないこととしました。
 なお,地方教育行政の組織及び運営に関する法律第17条により,国分寺市教育委員会の権限に属するすべての事務を教育長がつかさどっています。
 したがいまして,責任者は国分寺市教育委員会教育長です。

(2)国分寺市教育委員会は,不適切であるとの判断はしておりません。



【国分寺市民(東京都の人権意識を考える市民集会実行委員会)から国分寺市への公開質問状】   ←06.02.15 new

 国分寺市 市長殿
 国分寺市教育長殿

経緯


  平成17年度文部科学省委託事業「人権教育推進のための調査研究事業」の実施にあたり、平成17年3月国分寺市は委託先である東京都に実施計画書を提出しました。
  実施計画書の提出を受け、東京都と国は了解の意向を示し、国分寺市は実施に向けての準備に入りました。
  国分寺市は実施計画書にある「モデル事業の特色、工夫した点、期待される成果等」に記載したように、準備会方式を取り、広く市民を公募し、13名の市民が集まり準備に取り組んできました。「人権教育」というテーマに沿って準備会では、多様な議論の結果、人権に関する学習機会の充実方策として次のような事業計画を練り上げました。

   メインテーマ 「当事者主権」
 障害者、高齢者、子ども、海外支援などの問題を取り上げ、講座や講演会、映画上映、ワークショップなどを開催する。

 しかし、準備会参加者は、東京都は当計画の中に講演予定者として上野千鶴子さん(東京大学社会学部大学院教授)が上がっている事を知り、「上野さんは講師としてふさわしくない。講師を変えないと委託できない」と伝えられました。今回の事業は「当事者主権」を学ぶ講座であり、東京都が「ジェンダーフリー」の用語使用を理由として、上野さんが講師としてふさわしくないとしたことは理解出来ません。準備会参加者は、講師変更要求は不当で、到低納得の行くものではなく、変更する根拠がない旨を国分寺市に伝え、準備会の計画通りの内容で正式に東京都に提出して欲しいとお願いし、公民館の理解を頂きました。また、その後、国分寺市が突然、生涯学習推進課長名で取り下げの事務手続きを取り、委託契約を断念し、事業の実施は出来なくなりました。
  国分寺市の取った行動に対し説明を求めます。

公開質問状


1.事業計画案は要綱に沿って作成したが、逸脱があったと考えるか。

2.2005年12月15日東京都の人権意識を考える市民集会実行委員のメンバーが都庁で都に対し、抗議文並びに公開質問状を提出し面談した際、都は「東京都は8月1日に国分寺市に赴き、生涯学習推進課長、公民館館長並びに担当職員と会い、「ジェンダーフリー」に関する都の見解を示し、これに触れる事業になる懸念はないか?国分寺市の判断を尋ね、国分寺市は持ち帰った。その後何の連絡もなく、取り下げの事務連絡が来たと言っている」がそのような事実はあったのか。

3.8月17日付 生涯学習推進課長名で東京都への事務連絡の中で、「両者協議の上」とあるが東京都と国分寺市はどのような協議をしたのか。又、準備会に何の連絡もなく取り下げの手続きをとったことに対してどの様に考えるか。

4.この経過の中で、市民の知る権利、並びに人権は、損われたという認識はあるか。

    上記の質問に関しては、2月20日までに文書で回答し、お送り下さるようお願いいたします。

2006年2月5日
東京都の人権意識を考える市民集会実行委員会




【東京都から国分寺市民(東京都の人権意識を考える市民集会実行委員会)への回答】   ←06.02.15 new

17教生社第636号
平成18年2月7日


「東京都の人権意識を考える市民集会」実行委員会様

東京都教育庁生涯学習スポーツ部社会教育課長
船 倉 正 実


公開質問状について


 平成17年12月15日に公開質問状をいただきましたが、本件に関する事実経過は下記のとおりです。


 本事業は、東京都教育委員会の事業として国分寺市教育委員会に委託し、実施を計画していたものであり、東京都教育委員会は、同市が企画中の内容が「『ジェンダー・フリー』という用語の使用に関する東京都教育委員会の見解」を踏まえたものであるかどうかについて問い合わせたものです。
 東京都教育委員会は、国分寺市教育委員会が都の委託事業であることを考慮し実施しないこととしたものと理解しています。



【東京都からの回答】   ←06.02.09 new

17教生社第637号
平成18年2月7日

 上 野 千 鶴 子 様

東京都教育庁生涯学習スポーツ部社会教育課長
船 倉 正 実


公開質問状について


 平成18年1月13日付で知事、教育委員長、教育長及び社会教育課長宛の公開質問状をいただきましたが、本件に関する事実経過は下記のとおりです。


 本事業は、東京都教育委員会の事業として国分寺市教育委員会に委託し、実施を計画していたものであり、東京都教育委員会は、同市が企画中の内容が「『ジェンダー・フリー』という用語の使用に関する東京都教育委員会の見解」を踏まえたものであるかどうかについて問い合わせたものです。
 東京都教育委員会は、国分寺市教育委員会が都の委託事業であることを考慮し実施しないこととしたものと理解しています。



【督促状】

2006年2月7日

東京都知事殿
東京都教育長殿
東京都教育委員会委員長殿
東京都教育庁生涯学習スポーツ部社会教育課長殿
国分寺市市長殿
国分寺市教育長殿
国分寺市教育委員会委員長殿
国分寺市教育委員会生涯学習推進課長殿


 2006年2月6日の時点で、1月末日に期限を 設定した1月13日付け公開質問状に対する回答をいただいておりません。この手紙は再度時限を切って、文書による回答を督促するものです。次回の期限は2月20日とします。
 この期間にメディアの報道等によって、新たな事実関係が確認されましたので、それにもとづいて、質問の内容を変更します。したがって回答は、この督促状の指摘にもとづいて返答してください。

 事実関係については、
1)計画取り消しの意志決定を行ったのは国分寺市であり、その責任者は国分寺市教育委員会生涯学習推進課長、熊谷淳氏であること
2)その意志決定を迫ったのが東京都であり、その責任者は東京都教育庁生涯スポーツ部社会教育課長船倉正実氏、および担当者は人権学習担当係長森川一郎氏、主任社会教育主事江上真一氏であることが判明しました。それぞれの行政の最高責任者である国分寺市長と、東京都知事の責任については言うまでもありません。

 国分寺市教育委員会生涯学習推進課長から東京都教育庁生涯スポーツ部社会教育課長に宛てた平成17年8月17日付け事務連絡(添付資料)によれば、国分寺市事業の取り下げについて、「両者協議の上」という文言があります。またメディアの取材に対して、以上の事実経過については、国分寺市、東京都ともに事実を認めており、それについては争いがありません。

 したがって、
1)国分寺市には、計画取り下げの意志決定を行った責任があり
2)とはいえ、東京都の「介入」もしくは「調整」がなければこの意志決定は行われなかったわけですから、東京都には、依然として上野を講師として「不適切」と判定した説明責任があります。
以上の2点について、経緯を明らかにし、根拠を示してください。

 メディアの報道によれば以下のことが判明しています。
【丸つき数字1】上野教授には、「当事者主権」をテーマに初回の基調講演を依頼しようとして同(05年)7月、市が都に講師料の相談をした。しかし都が難色を示し、事実上、講師の変更を迫られたという。(毎日新聞2006.1.10)
【丸つき数字2】東京都教育庁生涯学習スポーツ部は「上野さんは女性学の権威。講演で『ジェンダー・フリー』の言葉や概念に触れる可能性があり、都の委託事業に認められない」と説明する。(毎日新聞2006.1.10)
【丸つき数字3】都教委は04年8月に決めた「『ジェンダーフリー』という用語を使用しない」とする見解を示し、「講座がその方針に反するなら実施できない」と念押しした。(朝日新聞2006.1.28)
【丸つき数字4】都教委社会教育課は「都が委託するモデル事業である以上、都の見解に反した事業は実施できないと伝えた。中止は市が判断したのであり、都としては拒否はしていない」と話している。(朝日新聞2006.1.28)
【丸つき数字5】市は「講座でジェンダーフリーという用語や、関連する内容が出る可能性が否定できない」として提案を取り下げたという。(朝日新聞2006.1.28)
【丸つき数字6】東京都教育庁は・・・「講座でこの用語が使われる可能性があるなら実施できない」との判断を、同市に示したため、同市が提案を取り下げていた。(朝日新聞2006.1.31)
【丸つき数字7】都教育庁は「ジェンダーフリーという言葉だけを問題にしたわけではない」と説明している。(朝日新聞2006.1.31)
【丸つき数字8】石原知事は同日(1.27)の定例会見で委託拒否について「都はそういう規制を加えたことはない」と述べた。(毎日新聞2006.1.28)
【丸つき数字9】石原知事発言録(1.27記者会見)「彼らが具体的に提唱している幾つかの事案に関しては、とても常識で言って許容できないものがたくさんあるから。やっぱりそういう例外的な事例が、余り露骨にメディアに持ち上げられて出てくると、ジェンダーフリーの、ある正当性を持ったムーブメントでもね、私はやっぱり非常に誤解を受けると思いますよ。」(朝日新聞2006.1.31)
【丸つき数字10】石原知事発言録(1.27記者会見) 「『ジェンダー』とか『フリー』とか言ったって英語のわからない人はさっぱり、おじいさん、おばさんはわからんよ、そんなものは。日本語でやってくれ、日本語で」(朝日新聞2006.1.31)

 ジャーナリストの方々がこの件をとりあげ、独自に取材をされて関係者の発言を引きだしてくださったことに感謝いたします。またこの件について、都政の最高責任者である石原知事が発言したことは重要です。以上の報道に都が抗議した経緯がないことから、報道の内容を都は事実として認めたことになります。それをもとに改めて検討すれば、事態はわたしが当初認識していたよりも深刻であることが判明しました。それについて以下に再確認したうえで、関係者の説明を求めます。

1) 取り下げの意思決定は市が行っているが、都が「難色を示し」(上記資料【丸つき数字1】)「認められない」「実施できない」(【丸つき数字2・3・4】)とくり返し、事実上の「拒否」をしたことはあきらかである。
2) 国分寺市から東京都宛の取り下げ文書のなかにも「両者協議の上」とある以上、中止の意思決定への都の関与は明白である。
3) 都の判断の根拠は、「用語に触れる可能性がある」というものであったが、さらに加えて「ジェンダーフリーという用語や関連する内容」(【丸つき数字 5】)という発言がある。たんなる用語統制に加えて、「関連する内容」を問題にするのは「思想統制」にあたる。また、どのような発言や考え方が「ジェンダーフリーに関連する内容」に当たるのか、またそれを誰がいかなる基準で判断するのか。用語の使用禁止以上に踏みこんだ発言であり、見過ごすことはできない。
4) さらに都は「ジェンダーフリーという言葉だけを問題にしたわけではない」(【丸つき数字7】)と発言している。それなら何が問題なのか。明らかにすべき説明責任がある。
5) 石原知事は、委託拒否について「都はそういう規制を加えたことはない」(【丸つき数字8】)と発言しているが、以上の証拠から「規制」があったことは事実であるから、発言を訂正し、事実経過を明らかにすべきである。また石原知事が「都はそういう規制を加えるべきでない」と考えているなら、独自の判断で市に「規制を加えた」担当課長および関係者に対し、厳重に注意してもらいたい。
6) 石原知事は、「ジェンダーフリー」に対する誤解が「例外的な事例にもとづくメディアの持ち上げ方」によると発言した。とすれば、2004年8月の都教委による「ジェンダーフリー」使用禁止の通達が、一部メディアの偏ったプロパガンダに影響されたものであることを認めたことになる。したがって「誤解」にもとづいて「ジェンダーフリーの、ある正当性を持ったムーブメント」を抑圧した責任がある。(【丸つき数字9】)
7) 石原知事は「日本語」の使用を推奨しているが、上野もその考えには基本的に賛意を示している(前回別送資料1)。だが発言のなかで、「ムーブメント」というカタカナ言葉を自ら使用することで馬脚を露呈した。(【丸つき数字9・ 10】)「テレビ」や「パソコン」はもはや「電影機」や「電脳」という言葉に置き換えられないほどにカタカナ言葉として定着しており、「ジェンダーフリー」だけが、その責めを受ける謂われはない。
8) 石原知事は発言のなかで、不用意に、「ジェンダーフリー」 を分解し、「『ジェンダー』とか『フリー』とか」と二語にしている(【丸つき数字 10】)が、「ジェンダーフリー」と「ジェンダー」とは異なる用語であり、混同は許されない。「ジェンダーフリー」の使用禁止が「ジェンダー」の用語の使用禁止に及ぶのは由々しい事態であり、 国際的にも学問的にもけっして許容できない。朝日新聞報道における見出し、 「『ジェンダー』使用不可 都」(2006.1.26)は重大な誤報であり、朝日新聞は直ちに訂正記事「『ジェンダーフリー』使用不可 都」(2006.1.31)を掲載した。学術用語としての「ジェンダー」と「ジェンダーフリー」とのかかる混同は、無知と認識不足から来るものであり、厳重に注意されたい。

 東京都および国分寺市の関係者の方々には、以上明らかになった追加情報を踏まえた上で、質問への回答を求めます。以上のような新しい展開を付け加える必要が生じたことは、もっぱら回答の遅延に原因があることを申し添えます。また本状は、内容証明郵便の書式に制限があり、かつ添付資料の同封が制約されるため、 簡易書留郵便でお送りすることとします。

 なお、1月27日付けで東京都知事および教育庁に宛てられた女性学・ジェンダー研究者らによる抗議声明(1808筆の個人および団体の署名を伴う)によって、本件は、上野個人からの東京都および国分寺市への抗議の域を超え、「言論・思想・学問の自由」の行政による侵害をめぐる問題に発展しています。内外のメディアの注目も高く、本状に対する東京都および国分寺市の対応については逐一関係者に情報公開するつもりでおりますので、誠実かつすみやかに説明責任を果たしてくださいますよう、要求いたします。


上野千鶴子
東京大学大学院人文社会系研究科教授

cc人権を考える市民の会/毎日新聞社/読売新聞社/朝日新聞社/日本経済新聞社/産業経済新聞社/東京新聞社/共同通信社/時事通信社/ジャパンタイムズ/ 日本女性学会/日本女性学研究会/日本ジェンダー学会/ジェンダー史学会/日本学術会議 /内閣府男女共同参画会議/内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)




【英文資料】

・1/30に、外国特派員協会の Professional luncheon で配付されたものの改訂版です(「抗議文」や「公開質問状」の英訳。native check 済み)。上野さんから提供していただきました。
-Letter of Protest; Regarding the intervention in a prospective lecture by Professor Chizuko Ueno of Tokyo University at the ‘Lectures on Human Rights’ organized by Kokubunji City

-An open letter from Professor Chizuko Ueno

-An Open Letter from the Planning Committee of Tokyo Public Meeting for Respect for Human Rights

-Process of the Kokubunji Incident  ←06.02.08 new

ピープルズ・プラン研究所の英語サイト People's Plan Japonesia にGFB関連論文がありますので紹介します。
Bashing Gender Equality: Establishing a System that Skews the Population on All Sides
by TAKENOBU Mieko
  ←06.02.08 new



【06.01.27 東京都知事定例記者会見会見録より】

石原知事定例記者会見録 2006年01月27日(金) 15:00〜15:28

【記者】今日、国分寺市が都の委託で計画していた人権学習の講座で、東大の上野千鶴子教授を講師に招こうとしたところ、教育庁がジェンダー・フリーに対する都の見解に合わないと委託を拒否していたことが報道でわかりまして、それに対して、本日、ジェンダーの研究者たちが知事あてに、この上野千鶴子教授を講師として受け入れることの拒否について、これが言論、思想、学問の自由の侵害だと抗議する文書を知事あてに提出したんですが、これについてのお考えをお願いします。

【知事】ちょっとそのいきさつは違うね、あなたの認識と。詳しくは教育庁に聞いてください。ちょっと違いますな。都はそこまで具体的にですね、そういう規制を加えた覚えはない。ただ、何というんですかね、認識を示して、警告というかね。まあ詳しくはね、私が言うと誤解を生じるから教育庁に聞いてください。

【記者】もう1つ追加でお聞きしたいんですが、ジェンダー・フリーという考え方についての知事のお考えをお聞かせください。

【知事】さあ、この言葉そのものがいい加減あいまいな言葉だしね。これにかまけてやっている性教育なるものの教育方針というのは全く違うし、グロテスクだし、私は反対ですね。あんなものは認められないね。恐らく日本人全体に審判させたら、99%がそっぽ向くと思うよ。

【記者】しかし、研究者たちは、そのジェンダー・フリーと性教育というのは、その考えは、本来はそういう考えではないと主張していますが、それについてはどうですか。

【知事】それはだから、ディテール(詳細)のこと、あなた方が検証しなさいよ。私がそんなのいちいち聞き覚えしているわけじゃないんだから。だからね、ジェンダー・フリー、男と女の性というものの格差を埋めていくというのは結構ですよ。
 しかしですね、彼らが具体的に提唱している幾つかの事案に関しては、とても常識でいって許容できないものがたくさんあるから。そういう例外的な事例がね、あまり露骨にメディアに持ち上げられて出てくると、ジェンダー・フリーのある正当性を持ったムーブメント(動き、流れ)でもね、私は非常に誤解を受けると思いますよ。
 詳しくは、だから教育庁に聞いてください。

(中略)

【記者】現在、東京都教育委員会では、「ジェンダー・フリー」という言葉を誤解を招くおそれがあるとして使わない方針を決めていらっしゃると伺いました。今後、知事はこの「ジェンダー」という言葉の使い方について、誤解がないように議論を重ねて理解を深めていくという努力をなさっていくおつもりはありますか。

【知事】何もね、日本なんだから英語使うことねえんだよ、わけのわからない英語をね。だからね、日本語にうまく訳せばいいじゃないですか。そうすればもっとわかりやすいよ。「ジェンダー」とか「フリー」とか言ったってね、英語のわからない人はさっぱり、おじいさん、おばあさんはわからんよ、そんなものは。日本語でやってくれ、日本語で。
 はい。




【inside report】

06.01.28 「東京都庁へ『上野千鶴子さんの講師委託介入事件の抗議行動』レポート」@みどりの一期一会

【マスメディア報道】

06.06 月刊誌『サイゾー』最新号(7月号)に、「上野教授拒否事件の余波!? 都庁御用メディアの体たらく」という記事が掲載されています(p.40)。『都政新報』という専門紙が、上野さんに執筆を依頼した原稿が不掲載になっていたというもの。以下はその冒頭部分です。 ←06.07.02 new
 かつては「アグネス論争」で名を馳せた“日本フェミニズム界のドン”こと上野千鶴子東京大学教授が、東京都庁との対決姿勢を鮮明にしている。「上野教授拒否事件」。先月号の本誌「岡留安則 激論ニッポンの真相」でも上野教授本人から真相が語られているが、この事件による思わぬ余波が発覚した。東京都の自治体情報を扱う専門紙「都政新報」(都政新報社)で、同問題を扱った上野教授の原稿が不掲載になっていたというのだ。
 ことの発端は、4月中旬に都政新報側が上野教授に原稿を依頼したこと。この担当者が事件のことを知らなかったためか、テーマについては教授に一任する形となった。上野教授はこれを受諾し、原稿の執筆を開始。ところが、都政新報の編集幹部はその後、都との関係悪化を恐れ、原稿のテーマは「ジェンダー・フリー」以外で、と上野教授に申し出た。だが、原稿はすでに書き上がったあとで、その内容はまさに、「拒否事件」について都側の対応を批判するものであった。結局この後、この原稿の不掲載が決定。上野教授へは原稿料も支払われていないという。
 ご参考までに、「不掲載」になった原稿をアップしておきますのでご覧ください。『都政新報』のウェブには、「石原都政の検証」というページがあります。「年表」もあるのですが、「都立養護学校に『つくる会』の教科書採用」という記載のある2001年を最後に、「10大ニュース」は更新されていません。
「不掲載」原稿;「役人のいる場所」 上野千鶴子(社会学者)
 なお、この不掲載原稿でも「東京都事件」と強調されているように、国分寺市を舞台にした社会教育講座講師任用にかかわる「事件」の原因を作ったのは国分寺市ではなく東京都です。事件後の国分寺市民側への市役所の対応は、(東京都とは異なって)誠実なものであり、その一端は、上に掲げた公開質問状とその回答に見ることができます。

06.03.05 "CLOSE-UP / CHIZUKO UENO / Speaking up for her sex"@Japan Times By ERIC PRIDEAUX (Staff writer)  ←06.03.17 new
(excerpts)
In the United States today, it is no longer radical to suggest that the next president could be a woman. In Nordic countries, no husband would rail at a pregnant wife who expected him to share child-raising duties. And female heads of state are now found the world over.

But in Japan, despite significant advances in gender equality in recent decades, such terms as "women's lib" and "feminism" are still almost as taboo among women as men.

Unless, that is, the woman in question is Chizuko Ueno, a University of Tokyo professor and one of Japan's most celebrated women's studies scholars who, thanks to her very un-Japanese passion for bluntness and public debate, is also easily the most controversial. Or, as 57-year-old Ueno says of herself: "I'm critical. I'm assertive. I'm disobedient.''



How do you interpret the Tokyo Metropolitan Government's alleged resistance to your talk in Kokubunji City? You wrote the officials a letter of protest. What was the response?

The Tokyo Metropolitan Government office sent me a letter. You can see it (in Japanese) on our Web site [www.cablenet.ne.jp/~mming/against_GFB.html]. It was just a short note saying they are not responsible for making a decision, that it was rather Kokubunji City that did so and TMG had only showed their concern (over use of the term "gender free.")

Will you take legal action?

I'm thinking about it.

Do you see this as a violation of your right to free speech?

Generally speaking yes, though no damage has been done to me. I have strong objections to any public body banning the use of any words unless they are discriminatory or hurtful to others.

Some women scholars describe a backlash against feminism that started in the 1990s. Do you regard this incident in that way?

I do think so, very much. Not only in terms of gender equality but, in a sense, there is a very dangerous trend of neo-nationalism, which makes all social minorities targets of bashing.

Examples include welfare underdogs and ethnic minorities like Korean residents. Tokyo Gov. Ishihara used the term "sangokujin" in a speech. [Literally, "people from third countries"; it generally refers to Taiwanese or Korean immigrants and their descendants, and is widely considered offensive.] Also, many people regard new migrants from Asia as a risk to public safety.

This kind of political climate is very defensive, rightwing, conservative, neo-nationalist and is being seen everywhere -- particularly among senior men and also among young men. If you look at rightwing demonstrations, they've recruited youngsters. It's quite similar to neo-Nazism in Germany and [far-right politician Jean-Marie] Le Pen in France, and maybe Bush supporters.

06.02.26 「『ジェンダーフリーはダメ』 国分寺市の講座中止 都VS上野千鶴子氏」@『読売新聞』多摩版 ←06.03.17 new
(リード文+記事の一部)
 ◆「事前検閲」厳しく批判 女性学者らも抗議文
 女性学学者の上野千鶴子・東大大学院教授を招いた講座を予定していた国分寺市が、「ジェンダーフリーという言葉が使われる可能性がある」と都が懸念したため、講座を中止したことから、女性学研究者や市民団体が都に反発する騒ぎになっている。上野教授自身も公開質問状を都に突きつけ、さらに国会でも取り上げられるなど、「ジェンダー」をめぐる議論が拡大している。(畑武尊)

 また、国会では2月上旬に社民党の辻元清美衆院議員がこの問題について提出した質問主意書に対し、政府は「講師選定は、委託先や再委託先で判断すること」と答弁。元は国の事業だが、講師選びは各自治体の裁量だとの立場を示している。
 上野教授は「私は(この語を)使わないが、その言葉を発する“恐れ”があるというだけでストップをかけるのは事前検閲と同じ。思想の自由を奪う」と都の姿勢を厳しく批判している。また、「都なら、相手にとって不足はない」とまで言い切る。
 研究者も巻き込んでの都と上野教授の対立は、今のところ収まりそうもない。

06.02.25 「ジェンダー・フリーの用語規制は言論・思想統制 国分寺市 上野さんの講座中止」@『I女のしんぶん』第914号 ←06.03.17 new
(一部抜粋)
 1月27日、呼びかけ人の若桑みどり千葉大名誉教授らが、抗議文と1808人の賛同署名を担当者に手渡した。提出後の記者会見で若桑さんは、「都教育庁の中で起こっていることが、やがては我々の学問や研究の場にも及ぶ分岐点だと思った。ジェンダー・フリー用語の言葉狩りだけを言っているのではなく、男女共同参画社会基本法ができたころからのバックラッシュの流れであり、危機的に受け止めている」と訴えた。

06.02.16 「『ジェンダーフリー』の壁(バリア)は越えられるのか」(今週の特集)@『女性セブン』vol.8(3月2日号) ←06.02.20 new
(リード文)
 「ジェンダーフリー」とは本来、社会的・文化的に形成された性別に縛られず、一人ひとりの個性と能力の発揮を支えるという考え方を指す。ところが、そのことを正しく認識している人は少なく、ある講座の中止をめぐり衝突が起きている。この言葉の意味と意義を、もう一度考えてみませんか。

06.02.15 「上野千鶴子さん講師拒否に 広がる都への抗議」@『ふぇみん』2月15日号(2783号) ←06.02.20 new

(一部抜粋)
 2月7日現在、東京都からこの公開質問状への回答はない。1月27日定例記者会見で石原東京都知事は、「ジェンダー・フリーの、ある正当性を持ったムーブメントでもね、私はやっぱり非常に誤解を受けると思いますよ」(朝日新聞1月31日)と今までの発言に比べてトーンが弱まっている。
 上野千鶴子さんは外国人特派員協会(ママ)での記者会見でも訴え、本紙のインタビューに答えて「なぜ上野個人が講師として適当でないのかきちんとした回答がほしい」と。また1808人が集まった抗議の動きについて「女性学の研究者などが、違いを超えて都への抗議の一点で一致して、短時間で組織的に行動したことは画期的であり、感謝している。今回のことは東京都を相手にした象徴的な事件であり、すでに各地の自治体や議会で同様のことが起こっている。ぜひそこでのたたかいを続けてほしい」と話している。
(赤石千衣子)

06.02.10 「『ジェンダーフリー』巡り研究者ら都に抗議」@『週刊金曜日』 ←06.02.12 new

(一部抜粋;全文は、上記リンク先ページで読むことができます)
 上野教授は都と国分寺市に対し、事実の説明を求める公開質問状を送ったが、期日の1月末日を過ぎた2月3日現在も返答がない。東京都生涯学習スポーツ部に聞くと「(宛先になっている都知事、教育長、教育委員会など)各部署の調整が出来次第、来週早々に発送する予定」とのこと。各々名で返答するかまとめて返答するかも決まっていないそうだ。
(宮本有紀・編集部)

06.02.08 「『ジェンダーフリー使うかも』上野千鶴子教授の講演中止に ■『言葉狩り』市民から抗議の声」@『社会新報』

(一部抜粋)
 東京都国分寺市の市民らが企画していた東京大学教授の上野千鶴子さんの講演が都教育庁の介入で実施されなかった問題で、千葉大名誉教授でジェンダー研究者の若桑みどりさんらは1月27日、「言論・思想・学問の自由への侵害」だとする抗議文を都教育長の担当者に手渡した。抗議文を呼びかけてから約3日間で1808筆に上る賛同署名が集まった。同日、都庁での記者会見で若桑さんは、「これを一つの重大なきっかけとして、これまでのバックラッシュに抗議する」と声を上げた。
(略)

 一方、石原知事は27日の会見で「都は、そこまで具体的に規制を加えた覚えはない。ただ、ある認識を示して警告と言うか…」と言葉を濁した。同庁は、委託するかどうかの話し合いの段階で、内容がジェンダー・フリーの用語に対する都の見解を踏まえたものか確認を求めたことは認めているが、結果的に市が辞退してきたとし、委託拒否を否定した。市の担当者は、都の方針を確かめた上で実施できないと判断したとして「残念だ」と話している。市民の中からは、「講演のテーマはジェンダー・フリーではないのに、どうして」との声が上がったという。(以下略)

 06.02.01 "'Gender-free' hard to define, harder to sell ; Vague concept morphs into anything-goes sex ed, elicits backlash" @JAPAN TIMES By AKEMI NAKAMURA and ERIKO ARITA (Staff writers)

(excerpts)
Last year's cancellation of lectures on human rights in Kokubunji, Tokyo, has pitted key feminist scholar Chizuko Ueno and free-speech advocates against conservatives in the Tokyo Metropolitan Government opposed to the use of "gender-free" -- a term whose definition varies but somehow conjures up negative images.

Experts say the cancellation reflects a backlash by conservative Japanese against the changing roles of men and women.

06.01.31 「性差否定より過激な上野教授−国分寺市『人権講座』問題 東京都への抗議文で判明」@『世界日報』
(リード文)
 上野千鶴子東大大学院教授が昨年、都の意向により国分寺市「人権講座」の講師から降ろされたことに対し二十七日、若桑みどり川村学園女子大教授ら五氏は都に抗議文を提出したが、その中で、政府でも使わない過激なジェンダー定義をしていることが判明した。政府は昨年末、第二次男女共同参画基本計画で、「ジェンダーは中立的な概念」と主張し、その盛り込みにこぎ着けたばかりだが、今回の出来事は、上野氏をはじめ、今の女性学者の多くが一般国民が到底理解できないジェンダー論に染まっていることを露呈した。
(ジェンダー問題取材班)


06.01.31 『朝日新聞』東京版訂正記事










06.01.31 「上野千鶴子氏、都に抗議文 『用語統制に介入した』」@『朝日新聞』
(記事の一部)
 上野教授は「私自身はこの用語を使わない立場だが、他人が使うことに反対するものではない。公的機関がこうした用語統制に介入することは言論・思想統制だ」と批判した。
 東京都教育庁の担当者は「ジェンダーフリーという言葉だけを問題にしたわけではなく、都の事業の趣旨にそうものかどうかの確認を市に求めた」と説明している。


06.01.28 「ジェンダー・フリー問題:研究者らが抗議 都に署名1808人分を提出 /東京」@毎日MSN (五味香織記者)
(転載許諾ずみ)
 「ジェンダー・フリーに対する見解が合わない」として都教育庁が上野千鶴子・東大大学院教授(社会学)の講師依頼を拒否し、国分寺市の人権学習講座が中止された問題で、ジェンダーの研究者や市民団体などは27日、石原慎太郎知事や都教育長らあての抗議文を1808人・6団体分の署名を添えて提出した。
 抗議文は、都教育庁の対応について「言論・思想・学問の自由への重大な侵害。“憶測”で前もって言論を封じた、あるまじき行為」と批判している。提出後の記者会見で、呼びかけ人の一人、若桑みどり千葉大名誉教授は、「都教育庁の中で起こっていることが我々の研究にも及ぶ分岐点だと思った。言葉狩りだけでなく、非常に危機的な状況だ」と訴えた。上野教授も、月末までの回答を求め公開質問状を出している。
 一方、石原知事は同日の定例会見で委託拒否について「都はそういう規制を加えた覚えはない」と述べた。「ジェンダー・フリー」に対しては「言葉そのものがいいかげんで、あいまい。日本人なんだから英語を使うことはないんだよ」と話した。【五味香織】
毎日新聞 2006年1月28日

06.01.28 「『ジェンダー』使用不可 都/女性学研究者の排除 上野教授 人権講座中止めぐり対立・研究者ら1808人署名、都に抗議」@朝日新聞東京版
(記事の一部)
 27日には、ジェンダー問題の研究者らが都に対し、「言論や思想の自由の侵害」と1808人の署名とともに抗議した。これに対し、石原慎太郎知事は、「都が規制を加えた覚えはない」と定例の記者会見で述べた。ただ、「ジェンダーフリー 」という用語については、「いい加減であいまいな言葉。非常に誤解を受けると思いますよ」などと否定的な見解を示した。
 事業を担当した都教委社会教育課は、「都が委託するモデル事業である以上、都の見解に反した事業は実施できないと伝えた。中止は市が判断したのであり、都として拒否はしていない」と話している。

06.01.28 「『ジェンダー・フリーの議論はダメ』 都教委が市講座に注文 国分寺市で中止に」@東京新聞

06.01.28 「上野千鶴子氏への講師依頼拒否 学者らが都側に抗議」@しんぶん赤旗

【ネットニューズ】

06.02.06 「都の“上野千鶴子外し”に1808名の抗議文 世界日報は『常軌を逸する女性学者』と応戦」@『セクシュアル・サイエンス』
(一部抜粋)

朝日新聞 抗議文は,今回のケースだけでなく,04年8月に都教委が「ジェンダーフリーという用語は使わない」としたが,それらを含めての抗議と理解してよいのか。

若桑 東京都で起きていることだけでなく,これまでのジェンダー教育全体へのバックラッシュの大きな流れに抗議している。

加藤 基本的には若桑さんと同じ考えだ。国分寺市問題だけでなく,東京都がジェンダーフリーという概念を誤解・曲解,ねつ造していることへの抗議でもある。

細谷 ジェンダーフリーという運動は,男女差別につながるジェンダーをなくしていこうという趣旨だと理解している。これに対してバッシング派は,「フリーセックスだ」なんてことを含め,めちゃくちゃなことを言っている。

 ジェンダーという言葉は学問的には生生(ママ。「生成」の誤りか)発展的な,プロダクティブナ(ママ)言葉で,分かりにくいところは確かにある。それで行政用語として使わないなら理解できる。しかし講師に呼ぶ・呼ばないを日頃の言動によってチェックすることに納得できない。これでは何事も都の見解と合った者しか講師に呼ばれないことになる。

米田 抗議文の内容が決まるまでには,いろんな論議があった。個々の文言に異論があっても,全体的な把握から署名した人もいると聞いている。国分寺市が予定した講座を復活せよと述べていないのは,それがどうでもよいからではなく,本件がもっと広い意味での抗議になっているためだ。

06.01.27 「都が上野千鶴子東大教授の講演予定に介入 『言論弾圧』と広がる抗議」@JanJan  (片桐友里記者)



【行 動】

・06.03.25 「『ジェンダー』概念を考えるシンポジウム」を東京都内で開催(「ジェンダー概念」シンポジウム実行委員会主催、「イメージ&ジェンダー研究会・日本女性学会共催)

・06.02.07 上野教授、回答期限を2月20日とする「督促状」を、東京都知事ほか宛てに送付。

・06.01.30 上野教授、外国特派員協会にて記者会見(Professional lunchoen)。

・06.01.27午後 「抗議文」呼びかけ人、都庁記者クラブにて記者会見。

・06.01.27午前 「抗議文」呼びかけ人ならびに賛同者、東京都庁を訪問し、抗議文を手渡す。

・06.01.23夕〜26正午 ウェブ「東京都に抗議する!」公開とともに、「抗議文」を掲示して賛同署名募集。

・06.01.13 上野教授、公開質問状を東京都知事その他宛に送付。

・06.01.10 毎日新聞夕刊、「『ジェンダー・フリー』使うかも・・・都『女性学の権威』と拒否」報道。

経緯その他について知りたい、という方は、(直下の)【抗議文】の下に、【顛末】として毎日新聞記事(の一部)、【上野教授の公開質問状】、【「東京都の人権意識を考える市民集会」実行委員会の公開質問状】(この市民集会は、国分寺市民により開催されました)を置いてありますのでご覧ください。




【抗議文】

【Letter of Protest】

東京都知事         石原慎太郎 殿
東京都教育委員会 教育長  中村 正彦 殿
東京都教育委員会 各位



抗 議 文

上野千鶴子東大教授の国分寺市「人権に関する講座」講師の拒否について、
これを「言論・思想・学問の自由」への重大な侵害として抗議する

1 言論の自由の侵害について

  報道によれば、今回の拒否の一因として、同教授がその講演において「ジェンダー・フリ−という言葉を使うかも」という危惧があった故だとされている。ひとりの学者/知識人がその専門的知見において、その著書または講演のなかでいかなる用語を用いるかは、学問・思想・言論の自由によって保証されている。学問・思想・言論の自由は、民主主義社会の根幹であり、なんぴともこれを冒すことはできない。

 まして、その講演が開催され、実際に発話されたのではないにもかかわらず、その用語が発せられるだろうという“憶測”によって、前もってその言論を封じたということは、戦前の「弁士中止」にまさる暴挙であり、民主憲法下の官庁にあるまじき行為である。

 このような愚挙がまかり通れば、今後、同様の“憶測”、”偏見 ”に基づいて、官憲の気に入らぬ学者/知識人の言論が政治権力によって封殺される惧れが強くなる。日本が戦前に辿ったこの道を行くことをだれが望むであろうか。それが日本の社会に住むひとびとの幸福な未来を描くと、誰が思うであろうか。

2 学問と思想の自由の侵害について

 ジェンダー理論は国際的に認知された思想・知見・学問である。現在欧米及びアジアの主要大学において、ジェンダー理論の講座を置かない大学はなく、社会科学、文化科学の諸分野でジェンダー理論を用いずに最新の研究を開拓することは困難である。

 いっぽうでは、それは1975年、第一回世界女性会議以降、世界のいたるところで太古から実行されてきたあらゆる種類の女性への差別を撤廃し、人間同士の間の平等を実現するという国際的な行動と連動し、その理論的な基盤を提供してきた。学問と社会的改良とは両輪となって人類の進歩に貢献してきたし、これからもそうである。

 しかしながら、「ジェンダー理論」は、同時期に国際的に認知された「ポストコロニアル理論」と同様に、3〜40年の歴史しかもっていない。したがって日本の人々のあいだにその用語および理論への理解が定着するにはまだまだ時間がかかるであろう。

 しかし、それは喧伝されているように「日本の伝統に反する」「外国製の」思想ではない。なぜならば、すでに明治時代からわれわれの先輩たちは、女性もまた参政権を得るために、また女性としての自立権を得るために血のにじむ努力をしてきたからである。この人々は新憲法によってその権利を保証されるまでは、弾圧と沈黙を強いられてきた。いまだに、在日朝鮮人をはじめとする外国籍市民は、参政権すら得ていない。日本の、また世界のひとびとが平等な権利を獲得するための、長い旅程の半ばにわれわれはいる。

 そのようなわれわれ自身の知見と努力の歴史の上に、国際的な運動のうねりと学問の進歩によって、われわれは国際的な用語としての「ジェンダー」とその問題を解明し、解決することをめざすジェンダー理論を獲得したのである。思えば、日本社会に生きるわれわれは、常に有用な智恵を世界に学び、これを自己のうちに内在する問題と融和させ、独自のものとして実践してきたのではなかったか。そこにこそ日本の社会の進歩があった。女性学・ジェンダー研究者は、今まさにそのために研鑽、努力している。その教えをうけた無数の学生、教育現場で実践する教師、地域で活動する社会人は、グローバルな運動の広範な基盤をなしている。上野氏はその先駆的なひとりである。今回の事件についてわれわれは強い危惧の念を覚えている。先人の尊い努力によってようやくに獲得できた思想、学問、行動の自由の息の根を止めさせてはならない。

3 ジェンダーへの無理解について

 ジェンダーは、もっとも簡潔に「性別に関わる差別と権力関係」と定義することができる。したがって「ジェンダー・フリー」という観念は、「性別に関わる差別と権力関係」による、「社会的、身体的、精神的束縛から自由になること」という意味に理解される。

 したがって、それは「女らしさ」や「男らしさ」という個人の性格や人格にまで介入するものではない。まして、喧伝されているように、「男らしさ」や「女らしさ」を「否定」し、人間を「中性化」するものでは断じてない。人格は個人の権利であり、人間にとっての自由そのものである。そしてまさにそのゆえに、「女らしさ」や「男らしさ」は、外から押付けられてはならないものである。

 しかしながら、これまで慣習的な性差別が「男らしさ」「女らしさ」の名のもとに行われてきたことも事実である。ジェンダー理論は、まさしく、そうした自然らしさのかげに隠れた権力関係のメカニズムを明らかにし、外から押し付けられた規範から、すべての人を解放することをめざすものである。

 「すべての人間が、差別されず、平等に、自分らしく生きること」に異議を唱える者はいないだろう。ジェンダー理論はそれを実現することを目指す。その目的を共有できるのであれば、目的を達成するためにはどうすべきかについて、社会のみなが、行政をもふくめて自由に論議し、理解を深めあうべきである。

 それにもかかわらず、東京都は、議論を深めあうどころか、一面的に「ジェンダー・フリー」という「ことば」を諸悪の根源として悪魔化し、ジェンダー・フリー教育への無理解と誤解をもとに、まさに学問としてのジェンダー理論の研究および研究者を弾圧したのである。このことが学問と思想の自由に与える脅威は甚大である。

 以上の理由をもって、われわれは東京都知事、教育庁に抗議し、これを公開する。

     2006年1月23日

呼びかけ人  若桑みどり(イメージ&ジェンダー研究会・ジェンダー史学会・美術史学会・歴史学研究会)
  米田佐代子(総合女性史研究会)
  井上輝子(和光大学・日本女性学会)
  細谷実(倫理学会・ジェンダー史学会・関東学院大学)
   加藤秀一(明治学院大学)




【顛 末】

毎日新聞報道 2006年1月10日 東京夕刊 「ジェンダー・フリー問題:都「女性学の権威」、上野千鶴子さんの講演を拒否 ◇用語など使うかも… 「見解合わない」理由に拒否−−国分寺市委託」
毎日新聞報道 2006年1月10日 15時00分 「人権講座:上野教授の講師を拒否 都教育庁が思い過ごし」
(五味香織記者)
 東京都国分寺市が、都の委託で計画していた人権学習の講座で、上野千鶴子・東大大学院教授(社会学)を講師に招こうとしたところ、都教育庁が「ジェンダー・フリーに対する都の見解に合わない」と委託を拒否していたことが分かった。都は一昨年8月、「ジェンダー・フリー」の用語や概念を使わない方針を打ち出したが、上野教授は「私はむしろジェンダー・フリーの用語を使うことは避けている。都の委託拒否は見識不足だ」と批判している。

 講座は文部科学省が昨年度から始めた「人権教育推進のための調査研究事業」の一環。同省の委託を受けた都道府県教委が、区市町村教委に再委託している。

 国分寺市は昨年3月、都に概要の内諾を得たうえで、市民を交えた準備会をつくり、高齢者福祉や子育てなどを題材に計12回の連続講座を企画した。上野教授には、人権意識をテーマに初回の基調講演を依頼しようと同7月、市が都に講師料の相談をした。しかし都が難色を示し、事実上、講師の変更を迫られたという。

 このため同市は同8月、委託の申請を取り下げ、講座そのものも中止となった。


(以下略。全文は記事タイトルをクリックしてください。)



【上野教授の公開質問状】

【open letter from ueno】


2006年1月13日



東京都新宿区西新宿2−8−1東京都庁
東京都知事殿
東京都新宿区西新宿2−8−1東京都庁
東京都教育長殿
東京都新宿区西新宿2−8−1東京都庁
東京都教育委員会委員長殿
東京都新宿区西新宿2−8−1東京都庁
東京都教育庁生涯学習スポーツ部社会教育課長殿
東京都国分寺市戸倉1−6−1国分寺市役所
国分寺市長殿
東京都国分寺市戸倉1−6−1国分寺市役所
国分寺市教育長殿
東京都国分寺市戸倉1−6−1国分寺市役所
国分寺市教育委員会委員長殿
東京都国分寺市戸倉1−6−1国分寺市役所
国分寺市教育委員会生涯学習推進課長殿



公 開 質 問 状


 平成17年度における文部科学省委託事業「人権教育推進のための調査研究事業」について、私を講師とする事業計画案を都教育庁が拒否した件について、国分寺市の「人権に関する講座」準備会のメンバーおよび、2005年11月20日に開催された「人権を考える市民集会」参加者から、経過説明を受けました。
 また2006年1月10日付け毎日新聞夕刊報道「「ジェンダー・フリー」使うかも・・・都「女性学の権威」と拒否」(別送資料1)によって、都の発言内容が一部明らかになりましたので、以下の事実について、説明を求め、抗議します。

(1)今回の国分寺市の委託事業の拒否にあたって、都および市のどの部局がいかなる手続きによって意思決定に至ったか、その責任者は誰であるかを、私にお示しください。

(2)その際、上野が講師として不適切であるとの判断を、いかなる根拠にもとづいて下したかを、示してください。

 なお、報告と報道にもとづいて知り得た限りの、都の説明に対する反論を、以下に記しておきます。

1)今回の講師案は「人権講座」であり、「女性学」講座ではない。講演タイトルに も内容にも「女性学」が含まれないにもかかわらず、「女性学」の専門家であることを根拠に拒否する理由がない。それならば、今後、この種の社会教育事業に、女性学関係者をいっさい起用しないということになる。

2)女性学研究者のあいだでは、「ジェンダー・フリー」の使用について一致がなく、一般に私を含む研究者は「ジェンダー・フリー」を用いない者が多い。さらに私は、「ジェンダー・フリー」を用語として採用しない立場を、公刊物のなかで明らかにしている。(別送資料2)都の判断は、無知にもとづくものであり、上野の研究内容や女性学の状況について情報収集したとは思えない。

3)とはいえ、私自身は「ジェンダー・フリー」の用語を採用しないが、他の人が使用することを妨げるものではなく、とりわけ公的機関がこのような用語の統制に介入することには反対である。なお、「ジェンダー・フリー」という用語について申し述べておけば、「ジェンダー・フリー」を「体操の着替えを男女同室で行うなど、行きすぎた男女の同一化につながる」という「誤解」が生じたのは、「誤解」する側に責任があり、「ジェンダー・フリー」の用語そのものにはない。

4)毎日新聞報道によれば、都の説明は「上野さんは女性学の権威。講演で『ジェンダー・フリー』の言葉や概念に触れる可能性があり、都の委託事業に認められない」とある。私は女性学の「権威」と呼ばれることは歓迎しないが、女性学の担い手ではある。都の見解では、「女性学研究者」すなわち「ジェンダー・フリー」の使用者、という短絡が成り立ち、これでは1)と同様、都の社会教育事業から私を含めて女性学関係者をいっさい起用しないことになる。

5)上記、都教育庁生涯学習スポーツ部の説明では、「『ジェンダー・フリー』の言葉や概念に触れる可能性があり」と婉曲な表現をしている。だが、「可能性」だけで拒否の理由とすれば、根拠もなく憶測にもとづいて行動を判断することになる。そうなれば、「『ジェンダー・フリー』の言葉や概念に触れる可能性がある」との理由で、女性学研究者はすべて都の社会教育事業から排除される結果となる。

6)もしそうではなく、他の女性学研究者は講師として適切であり、上野だけが不適切であるという判断を都がしたのであれば、その根拠を示す必要がある。

7)上野は、他の自治体の教育委員会や人権関係の社会教育事業の講師として招請を受けている。また解散前の東京都女性財団に対しても、社会教育事業の講師として貢献してきた。かつての上野に対する都の評価が変化したのか、あるいは他の自治体とくらべて都に上野を拒否する特別な理由があるのか、根拠を示してもらいたい。

8)以上の都の女性学に対する判断は、女性学を偏った学問と判定するこれこそ偏向した判断であり、学問として確立された女性学に対する、無知にもとづく根拠のない誹謗である。

 以上の反論をふまえたうえで、上記2点の質問に対する回答を、1月末日までに、文書でお送り下さるよう、要求します。以上、内容証明付きの郵便でお届けします。なお、同一の文書は主要メディアおよび女性学関連学会にも同時に送付することをお伝えしておきます。

上野千鶴子
東京大学大学院人文社会系研究科教授
東京都文京区本郷7−3−1


資料1:2006年1月10日付け毎日新聞夕刊報道「「ジェンダー・フリー」使うかも・・・都「女性学の権威」と拒否」
資料2:上野インタビュー「ジェンダーフリー・バッシングなんてこわくない!」 『We』2004年11月号(p2-19)
(資料は別送)

cc人権を考える市民の会/毎日新聞社/読売新聞社/朝日新聞社/日経新聞社/サンケイ新聞社/東京新聞社/日本女性学会/日本女性学研究会/ジェンダー学会/ジェンダー史学会/学術会議/内閣府男女共同参画会議/男女共同参画大臣




【「東京都の人権意識を考える市民集会」実行委員会の公開質問状】

【open letter from Kokubunji citizens】


東京都新宿区西新宿二丁目8番1号第二庁舎27階
教育庁 生涯学習スポーツ部主任社会教育主事(副参事)
江上 真一様
東京都新宿区西新宿二丁目8番1号
東京都教育庁 教育長
中村 正彦様

 拝啓

 2005年12月15日、都庁において「人権教育推進のための調査研究事業」の件について、私達「東京都の人権意識を考える市民集会」名で、抗議文、ならびに、公開質問状を提出いたしました。その後、公開質問状に対しての回答を頂いておりません。

 つきましては、2006年1月末日までに、文書で回答頂きたく再度お願い申し上げます。

 以上、内容証明、配達証明付きの郵便でお届けします。

              
公 開 質 問 状


1、 事業計画について

○  「当事者主権」の講演を企画したのに、上野さんの講演内容を想像して、ジェンダーフリーに触れるとしたのはなぜか。

○  準備会が提案した事業計画案は要綱に沿って作成したが、どの部分に逸脱があったか。

2、 講師(上野千鶴子氏)に関して

○  東京都は、上野さんは講師としてふさわしくない、一定の立場に立った講演内容になると伝えてきた。上野さんは、ジェンダーフリーという用語の使用はしないという立場に立っている。一定の立場とは何を示すのか、またその他にふさわしくないとした東京都の根拠と理由を示せ。

○  同じく一定の立場と判断される人は誰か。

3、 講師選定委員会について

○  2年前から発足した講師選定委員会が、発足に至った経緯、委員会のメンバーを知りたいので、会則を示せ。

○  東京都の事業を行う場合、講師選定委員会にかけるかどうかは、どう判断し、誰が決定するのか。今まで、講師選定委員会で、検討された講師は誰か。可否とされた氏名とその理由を示せ。

4、 委託事業について

○  国からは要綱以外に、講師選定など、条件や、ルールを示されているのか。

○  今回の経緯についてはどのように報告しているのか。

5、 行政手続きについて

○  委託できない理由について、文書で示されないのは、経緯や、決定が市民に明らかにならない。文書でのやり取りの重要性をどの様に認識しているのか。

○  8月17日付け、国分寺市教育委員会生涯学習推進課からの事務連絡の中で、「両者協議の上」とあるが、東京都と国分寺市はどの様な協議をしたのか。

2005年12月15日
「東京都の人権意識を考える市民集会」
実行委員会



【言及・リンクしてくださっているブログエントリ(記事)・ウェブサイト】

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●公開質問状
ブログ;地球が回ればフィルムも回る;「『東京都VS上野千鶴子』 ニュース」 http://blue.ap.teacup.com/documentary/477.html

●抗議文・抗議活動
ブログ;JOHNY’s BLOG;「ジェンダーバッシング」 http://blog.goo.ne.jp/johnybleu/e/ca27825295e49f1a7a3c40a576d5e3e7
ブログ;strictkの日記;「『東京都に抗議する!』の件に関して」 http://d.hatena.ne.jp/strictk/20060126
ブログ;++ぶろぶろ百z++;「東京都に抗議した結果発表」 http://yaplog.jp/sugarpenguin/archive/142
ブログ;今日、考えたこと;「『上野さん地雷』を激しく炸裂させるために」 http://tu-ta.at.webry.info/200601/article_13.html
ブログ;ブログ版 労働情報;「上野千鶴子東大教授の国分寺市での講師拒否問題で記者会見」 http://blogs.yahoo.co.jp/rodojoho05/23912688.html
ウェブサイト;レイバーネット;「『ジェンダーフリー』の何が問題?〜都知事に抗議へ」 http://www.labornetjp.org/news/2006/1138286051029staff01

●督促状
ブログ;不機嫌な日常;「上野千鶴子情報」 http://daico.exblog.jp/2659528/
ブログ;薔薇、または陽だまりの猫;「上野千鶴子さんが石原都知事らに『督促状』」
 http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/8f66b5394b2acd4d5c825dcea3ea9019
ブログ;Living, Loving, Thinking;「上野千鶴子(督促状)」 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060208/1139371656
ブログ;みどりの一期一会;「速報! 上野千鶴子さんが東京都に『督促状』を郵送。」 http://blog.goo.ne.jp/midorinet002/e/7fb1a144639e0bd200c19197b4a587b4
ブログ;成城トランスカレッジ!;「見る前に飛べ。」 http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20060208/p2
ブログ;ロワジール館別館;「ケンカのやり方」 http://kaorusz.exblog.jp/4128201/

●都の回答
ブログ;Words and Phrases;「『督促状』の効果でしょうか」 http://d.hatena.ne.jp/june_t/20060209/p1
ブログ;みどりの一期一会;「東京都教育庁から回答『公開質問状について』/上野千鶴子さん講師拒否問題」 http://blog.goo.ne.jp/midorinet002/d/20060209

●ほか
ブログ;「心に浮かぶよしなしごと」日記;「上野さんの講師拒否事件に抗議―抗議への賛同者は1808人」 http://blog.livedoor.jp/ohmikiko/archives/50069434.html
ブログ;東京悪女会/ダンディ・ウーマン(公式ブログ);「上野千鶴子教授と『ジェンダーフリー』の問題について」 http://blog.goo.ne.jp/otomeza007_1947/e/462b4135ae590ac4bae520cbcf87b870
ブログ;【マスメディアが民衆を裏切る、12の方法】;「上野千鶴子が売られたケンカを買ったらしい」
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ブログ;今日、考えたこと;「上野さんが東京都に拒否された話について」 http://tu-ta.at.webry.info/200602/article_5.html

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(ブログじゃない)ウェブサイト;
女性ユニオン東京 http://www.f8.dion.ne.jp/~wtutokyo/




【信濃毎日新聞「月曜評論」2006.01.23 上野千鶴子(熊本日日新聞にも掲載)】
  (ウェブ掲載にあたっては、許諾をいただいています。)

(タイトル)ジェンダー・フリーをめぐって

 東京都知事とけんかを始めた。

 正確にいうと、売られたけんかを買っただけで、こちらから売ったわけではない。毎日新聞(2006年1月10日付け)に「ジェンダー・フリー問題:都『女性学の権威』、上野千鶴子さんの講演を拒否/用語など使うかも…『見解合わない』理由に拒否−−国分寺市委託」の記事が掲載されたので、知っている人もいるかもしれない。主催側の市民団体の方たちから、都の委託事業で国分寺市が主催する人権講座に、「当事者主権」のテーマで講演してほしいという依頼を受け、それが都の介入によって取り消しになった経過説明を受けていた。だが、都の説明文書があるわけではなく、もっぱら伝聞情報ばかりなので、反論のしようがない。毎日新聞の記者が、都の東京都教育庁生涯学習スポーツ部社会教育課長に取材して、発言を記事にしてくれた。それでようやく言質がとれた。

 それによれば「上野さんは女性学の権威。講演で『ジェンダー・フリー』の言葉や概念に触れる可能性があり、都の委託事業に認められない」とある。私は女性学の「権威」と呼ばれることは歓迎しないが、女性学の研究者ではある。都の見解では、「女性学研究者」すなわち「ジェンダー・フリー」の使用者、という解釈が成り立つ。わたしに依頼のあった講座は、人権講座で、タイトルにも内容にも「ジェンダー・フリー」は使われていないのに、「可能性がある」だけで判断するのだから、おそれいる。世の中には、「ジェンダー学」を名のる研究者も多く、それらの人々はましてや「ジェンダー・フリー」を使う可能性が高い。そうなると、女性学・ジェンダー研究の関係者は、すべて東京都の社会教育事業から排除されることになる。

 わたしは石原都政以前には都の社会教育事業に協力してきた実績があるし、現在でも他の自治体からは教育委員会や男女共同参画事業の講演者に招聘されているのだから、都にとってだけ、とくべつの「危険人物」ということなのだろうか?

 看過するわけにいかないので、公開質問状を、石原慎太郎東京都知事、東京都教育委員会、国分寺市、国分寺市教育委員会等に1月13日付けの内容証明郵便で送った。意思決定のプロセスを明らかにし、責任が誰にあるのかを問うことと、上野が講師として不適切であるとの判断の根拠を示すように求めたものである。回答の〆切は1月末日。

 こういうやりとり、おそらく石原知事は「余は関知せず」というだろう。都庁の役人が、都知事の意向を忖度してやったことと思うが、この時期に都の生涯学習スポーツ部社会教育課長という職にたまたま就いていた人物は、自分がどんな地雷を踏んだかに気がついていないだろう。この役人も、おそらく石原都政前には別な判断をしていただろうし、石原政権が交替すればまたまた変身するかもしれない。すまじきものは宮仕え。ご苦労さんとは思うが、ことは上野個人の処遇に関わらない。ゆきすぎた「ジェンダーフリー・バッシング」には徹底的に反論しなくてはならない。

 公開質問状は主要メディアにも同時に送付した。現在までのところ、毎日とNHKは報道、朝日と時事通信からは取材、外国人記者クラブからもコンタクトがあった。本欄の読者の方たちは、このエッセイで初めて知ることになるだろうか。今後の帰趨を見守ってもらいたい。




【国会での動き】

06.02.10 辻元清美衆議院議員(社民党)が提出した質問主意書への答弁書が出ました。
「「小泉内閣の『ジェンダー・フリー』及び女性学についての認識に関する質問」に対し、答弁書が出ました」@辻元清美ブログ

質問名「小泉内閣の『ジェンダー・フリー』及び女性学についての認識に関する質問主意書」の経過情報@衆議院
 このページ↑から、質問主意書、答弁書のhtml版、pdf版を入手することができます。

06.02.02 辻元清美衆議院議員(社民党)が、今回の件について、質問主意書を提出しました。
「小泉内閣の『ジェンダー・フリー』及び女性学についての認識に関する質問主意書を提出しました。」@辻元清美ブログ





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