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福井事件home  東京都に抗議する!  東京都の男女平等参画政策の後退を憂慮する!  猪口大臣に面会しました!

 以下は、8月11日付けで、(まぼろしの)「原告団」からの4人で提出された「公開質問状」です。


2006年8月11日

公開質問状

福井県知事 西川一誠 様

福井「ジェンダー図書撤去」究明原告団
代表 上野千鶴子
福井県敦賀市議 今大地はるみ
岐阜県山県市議 寺町知正
事務局 寺町みどり
問い合わせ・連絡先 寺町みどり



 今般の異常な事態につき、下記の点に関して、8月21日(月)までに標記あて文書での回答を求める。

第1 経過
 2006年5月1日付けの一部のものの公開請求につづき、2006年6月26日付けの「世界日報の記事に関して、生活学習館・情報ルームから排除したとされる県が取得した150冊の書籍リスト」との公開請求に対して、7月7付で一部非公開の処分をした。
 しかし、本日、突然、公開すると通知されてきた。

非公開決定通知書には、
 公開しない部分として、
  「表題部、NO、書籍名、副題、著者・編者、出版社、備考各欄記載事項」
 公開しない理由として、
  「福井県情報公開条例第7条第1号該当
    公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがあるため
   福井県情報公開条例第7条第2号該当
    公にすることにより、事業を営む個人の権利、競争上の地位そ
    の他正当な利益を害するおそれがあるため」
と記されていた。

第2  本件条例の定める制度(関連部分)
1. 本件条例の前文
 前文では、「情報公開制度は、県が『説明責務』を全うするための重要な制度であり、地方分権が進展し、今後ますます地方自治体と住民の自立と自己責任が求められていく中で、県民の理解と信頼を基本とする、公正で透明性の高い県政を実現する上においても、不可欠のものである。」としている。

2. 条例の趣旨、目的(第1条)
 本件条例第1条は、「この条例の目的を明らかにし、福井県における情報公開制度の基本的な考え方を定めたものであり、第1 条は、「この条例は、公文書の公開を請求する権利の内容を明らかにするとともに、公文書の公開の手続その他必要な事項を定めることにより、県民の県政参加の一層の推進および県政の公正な運営の確保を図り、もって地方自治の本旨に基づいた県政の推進に資することを目的とする。」と規定している。
 福井県の情報公開制度は、この住民固有の権利を具体化し、住民の県政への参加を促し、開かれた県政を実現することを目的とするものである。

3. 実施機関の責務(第3条)
 本件条例は第3条で「実施機関は、この条例に基づく公文書の公開を請求する権利がじゅうぶん保障されるように、この条例を解釈し、および運用しなければならない」としている。

4. 公開請求権 (第5条)
 本件条例第5条は、(公文書の公開を請求できるもの)として「何人も、この条例の定めるところにより、実施機関に対し、公文書の公開を請求するコトガできる。」としている。

5. 公文書の公開義務 (第7条)
 本件条例第7条の規定の要点は、本文柱書が「実施機関は、公開請求があったときは、公開請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、公開請求者に対し、当該公文書を公開しなければならない。」としている。

 以上のことを前提に、以下を質問する。

第3  本件当初の処分に関する質問 (1 号個人情報に関して)
1. リスト作成者の保護という点について
 (1) 検閲にあたる違法行為
 基本的に、本件リストを作成して特定書籍の排除を求めたり排除をすることは検閲に当たる違法行為である。本件において、同リストに基づき抗議を受けるまでのあいだ閉架もしくは一般の閲覧の不可能な場所に在置したこと、特定書籍を排除の意図をもって調査したことは検閲に当たる違法行為とは考えないのか。
 (2) また、思想・良心の自由、表現の自由、著作者人格権等を侵害する行為とは考えないのか。
 (3) 本件条例が知る権利をうたうにもかかわらず、表現の自由や思想の自由などを制限しようとした行為の記録は公開の公益及び利益がはるかに勝るとは考えないのか。

2. 1号本文に関して
 最高裁は、「公立図書館の図書館職員は,公立図書館が上記のような役割を果たせるように,独断的な評価や個人的な好みにとらわれることなく,公正に図書館資料を取り扱うべき職務上の義務を負うものというべきであり、閲覧に供されている図書について,独断的な評価や個人的な好みによってこれを廃棄することは,図書館職員としての基本的な職務上の義務に反するものといわなければならない。」(最高裁(第一小法廷)平成17年07月14日判決)としている。
 (1) 作成者が県職員である場合
 本件リストは、当初のリスト作成者の示したリストを県職員が加工したものである可能性が極めて高い。そもそも、本件リストは県職員が作成したものか、それとも県職員以外が作成したものか。公務に関する情報は(但し書きハに関係なく)個人情報に該当しないと考えないのか。
 (2) 作成者が民間人である場合
 本件リストは、それが個人の主張という意味で一般的なプライバシー保護の領域に入るとしても、本件においては、公開されないことから得られる個人的な利益は、特段に存在しないのではないか。
 (3) 著者の名誉などの点について
 「著者」は、自らの考え・思想などを公然と表現したのだから、それらについての論評・議論される是としていることは明白である。
 仮に、特定リストに計上されたからといって、著者らが不利益を被るとは考えられないがどうか。

3. 但し書き該当性に関して
 仮に、1号本文に該当するとしても、次のとおり、但し書きに該当するのではないか。
(1) 但し書きイ
 「イ 法令もしくは他の条例の規定によりまたは慣行として公にされ、または公にすることが予定されている情報」
 本件リスト記載の図書は、そもそも、広範に閲覧・購読・展覧されることを目的として作成されている書物である。
 本件特定意図のリストに計上されたからといって、「慣行として公にされ、または公にすることが予定されている情報」という公的領域にある情報ということになんら変わりは無いとは考えないのか。
(2) 但し書きロ
「ロ 人の生命、健康、生活または財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」
 著者・編者にとって、当該の書物等が図書館等公衆の閲覧に供する目的で在置されていること自体、著者・編者「財産権」である(参照「著作者の思想の自由,表現の自由が憲法により保障された基本的人権であることにもかんがみると,公立図書館において,その著作物が閲覧に供されている著作者が有する上記利益は,法的保護に値する人格的利益であると解する」最高裁(第一小法廷)平成17年07月14 日判決)。  著者の「生活または財産を保護する」ために公開すべきではなかったのか。
 (3) 但し書きハ
 「ハ 当該個人が公務員である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員の職および氏名ならびに当該職務遂行の内容に係る部分(当該公務員の職および氏名に係る情報にあっては、公にすることにより当該公務員の権利利益を不当に害するおそれがある場合の当該情報を除く。)」
 (一) 情報公開における公務員の定義・範囲
 公務員もしくは条例で位置づけられていなくても(首)長の委嘱など任命行為に準ずる手続を受けた場合の民間人の当該の職務は公務員とおなじと評価することが最高裁判決で確定している。
 (二) 本件リストの作成者が福井県職員である可能性があるところ、事実なら、当然、県の公務情報である。
 (三) リスト作成者が特定民間人であるなら、同人は、福井県男女共同参画推進条例及び同要綱などに定められた「男女共同参画推進委員」である。
 つまり、「男女共同参画の推進に係る普及事業その他の活動を行う男女共同参画推進員を置く」(同推進条例7条)とされ、「推進員の主体的な活動を通じて、男女共同参画社会づくりに資することを目的とする」(同運営要領1条)とされ、推進委員の職務のひとつには、任期間中、随時、県の施策に対する提言ができるとされているから、リスト(作成行為)は福井県の公務というべきである。
 (四) 「ふくい男女共同参画プランの推進に関して熱意と奉仕的精神を有する者を、県民から公募し知事が委嘱する。」(同運営要領5条)とされ、県知事から委嘱状も交付されている。年間の活動に対して報償費が定額で支給されている。リスト作成者は公務員に準ずる立場だから、公務にかかるリストというべきである。
 (五)県は別件の「推進委員の活動に関する情報公開請求」において、全委員の氏名や活動記録などを全て公開していることからも、そもそも、被告は、本件条例において公務員に準ずる立場として位置づけている。
 (六) 以上ことから、公務に関する情報として、そもそも公開しなければならなかったのではないか。

第4  本件処分の違法性(2号事業者情報に関して)
1. 事業者情報「第7条第2号」の非公開理由
 編集者と出版社が(法人等または)当該個人に当たる。
 「事業を営む個人」とは、本件リストに記載された図書の著者・編者を指すという。そもそも、出版社あるいは著者・編者が、社会的あるいは個人的にどのように評価され評論されようと、そのこと自体は、当事者が受容していることであるというべきであり、社会通念としても、同旨に認識されている。このことは、図書に関しては、個人であろうと法人であろうと、妥当する。よって、「表題部、NO、書籍名、副題、著者・編者、出版社、備考各欄記載事項」にその字義の内容の記録がされている場合に、当該情報を公開しても、出版社あるいは著者・編者である。
 むしろ、真実か不実かが不明なまま、一部新聞に名指しされたり、リストが各所配布されている(新聞報道)にもかかわらず、当事者に公開されないことのほうが著し当事者の権利及び競争上の地位その他正当な利益を害している。
以上、本件非公開処分は違法ではなかったのか。

第5 リストの体裁について
1.「NO」とは何に基づく番号か。同館の備品台帳(図書目録)などに関連しているのか。通し番号なら何番から何番までか。それともランダムな数のか。
 当初のリスト作成者の付したものか。
 同館の職員が付したものか。
2.「備考各欄記載事項」は、誰が書きこんだものか。その書き込みの文字内容は誰が考えたのか。

                                 以  上